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「相続させる」遺言と遺言執行者の権限(登記申請・預貯金)

2021年3月23日

「相続させる」遺言について

現在、遺言を作成する際に多用するのが「相続させる」遺言です。
より具体的には、

「〇〇にある不動産を、長男に相続させる。

「〇〇銀行〇〇支店の口座番号〇〇は、長女に相続させる。

等の文言で、遺言に記載されています。

相続させる遺言

 この「相続させる」遺言の法的効力については、さまざまな判例がありましたが、令和の民法改正により、新民法第1014条2項により「特定財産承継遺言」という名が与えられ、民法上の根拠が与えられました。(令和元年7月1日施行)

(特定財産に関する遺言の執行)
第1014条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。
 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。
 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。


「遺言執行者」の権限及び地位

 遺言の内容を実現するには、誰かがその遺言の内容に従って行動をしなければなりません。
 一番良いのは、遺言を作成した者が遺言内容を実現することですが、遺言書の効力が発生した時(=遺言作成者が死亡時)には、当然ながら遺言作成者はこの世に居ないため、遺言内容を実現することができません。
 そのため、遺言内容を実現するための行動する者としては、下記のどちらかになります。

  • 1)相続人
  • 2)遺言執行者

相続人の場合

 遺言書で、特に遺言執行者の指定がない場合は、相続人全員で遺言の内容を実行していきます。当然、相続人間で特定の相続人に、遺言の実行を任せることも可能です。

遺言執行者の場合

 遺言書で、遺言執行者の指定がある場合は、原則遺言執行者が、遺言書の内容を実現することになります。(民1012)
 なお、遺言により遺言執行者に指定されていたとしても、その者は、遺言執行者の就任を拒絶することもできます。(民1006③)
 遺言執行者予定者が遺言執行者の就任を拒絶し、遺言執行者がいなくなった場合は、相続人全員で遺言内容を実現するか、利害関係人より家庭裁判所に新たに遺言執行者の選任を求めることができます。(民1010)

遺言執行者の通知義務及び相続財産目録の作成

 遺言執行者に指定された者が、遺言執行者の就任を承諾した場合は、遅滞なく「遺言の内容」を相続人に通知しなければならないとされました。(民1007②)
 これは、相続人にとって、遺言執行者の有無が相続手続きにおいて、重要な事項となるために、新たに設置された条項となります。

 なお、遺言執行者は、遺言執行者の就任後、遅滞なく相続財産の目録を作成し、相続人に交付しなければならことは、従前どおりとなります。(民1011①)

遺言執行者 遺言の内容を通知 相続財産目録の交付


(遺言執行者の任務の開始)
第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。


(相続財産の目録の作成)
第1011条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。


 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

不動産の名義変更(遺言執行者がいる場合)

「相続」を原因とする所有権移転登記手続き

下記内容の遺言に基づき不動産に関しての名義変更手続きについて

【遺言内容】
 「下記不動産は、長女であるAに相続させる。
   不動産の表示 広島県広島市〇〇区〇丁目〇〇番〇」
 「遺言執行者は、長男であるBを指定する。」

 上記の遺言は、遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(特定財産承継遺言)となります。
 この場合、遺言執行者は、当該共同相続人が民899の2①に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができるとされました。(民1014②)

  なお、民1014②の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その遺志に従うとされました。(民1014④)


(特定財産に関する遺言の執行)
第1014条 略
 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

 略

 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 これにより、不動産を目的とする特定財産承継遺言がされた場合に、遺言執行者は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときを除き、単独で、法定代理人として、相続による権利の移転の登記申請することができるとされました。(令和元年6月27日付け法務省民二第68号法務局通達)


  本件のケースでは、遺言執行者Bが、相続人をAとする、相続登記を単独で申請することができることになります。

 なお、当該相続人が単独で、相続による権利の移転の登記を申請することができることは、従前のとおりとなります。(上記通達)


 本件のケースでは、相続人Aが、自身で相続人をAとする、相続登記を単独で申請することもできることになります。

<<注>>
 遺言執行者が、相続人に代わって相続登記ができるのは、民法改正の施行の日(令和元年7月1日)にされた、特定の財産に関する遺言(=「相続させる」遺言)に係る遺言執行者による執行については適用しないとされました。(民法改正附則第8条第2項)

遺言執行者が指定されている
「相続させる」旨の遺言作成年月日
相続人
よる相続登記
遺言執行者
よる相続登記
令和元年6月30日以前可能(注1)不可(注2)
令和元年7月1日以降可能可能

(注1)昭和47.4.17民甲1442号民事局長通達、最判平3.4.19民集45巻4号477頁
(注2)最判平7.1.24判時1523号81頁

「遺贈」を原因とする所有権移転登記手続き

  下記内容の遺言に基づき不動産に関しての名義変更手続きについて

【遺言内容】
 「下記不動産は、長女であるCに遺贈させる。
   不動産の表示 広島県広島市〇〇区〇丁目〇〇番〇」
 「遺言執行者は、長男であるDを指定する。」

 「遺贈する」旨の遺言の場合、原則として包括遺贈・特定遺贈のいずれの場合も、受遺者(遺贈を受ける者)遺言執行者共同申請により、遺贈者から受遺者に対する「遺贈」を原因とする所有権移転登記申請をすることになりました。(民1012②)


  本件のケースでは、登記権利者をC、登記義務者をDとする、「遺贈」を原因とする所有権移転登記申請が可能となります。

(遺言執行者の権利義務)

第1012条 略

 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。

 なお、従前は、相続人全員を義務者としても「遺贈」を原因とする所有権移転登記申請も可能でしたが、令和の民法改正により、民法改正の施行の日(令和元年7月1日)にされた、特定の財産を「遺贈」する遺言については、相続人全員を登記義務者とすることはできません。(民法改正附則第8条第2項)

 本件のケースでは、相続人CとDが義務者となり、相続人Cが権利者となって
「遺贈」を原因とする所有権移転登記申請のことになります。
 遺言の作成年月日により、登記義務者となれる者が変わりますので、注意が必要です。  

遺言執行者が指定されている
「遺贈する」旨の遺言作成年月日
相続人全員
よる「遺贈」登記
遺言執行者
よる「遺贈」登記
令和元年6月30日以前可能可能
令和元年7月1日以降不可可能

※遺言執行者が指定されていない「遺贈する」旨の遺言は、従前どおり相続人全員が登記義務者、遺贈を受ける者が登記権利者となって、登記申請を行います。

預貯金の払戻し(遺言執行者がいる場合)

  下記内容の遺言に基づき預貯金の払い戻し手続きについて

【遺言内容】
 「下記預貯金は、長女であるEに相続させる。
   預貯金の表示 〇〇銀行 〇〇支店 口座番号〇〇〇〇〇〇

 「遺言執行者は、長男であるFを指定する。」

 令和の民法改正により、民1014③が追記され、遺産分割方法の指定の対象財産が預貯金債権である場合に、遺言執行者にその行使権限を明確に認めることになりました。


(特定財産に関する遺言の執行)
第1014条 略
 略
 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。

 つまり、遺言執行者に、預貯金債権の「解約」及びその「払戻し」ができる権限が明確に認められ、現行の銀行実務に沿った改正となりました。

武田事務所の特徴

司法書士法人武田事務所は、相続手続き、遺言実行のお手伝い等に豊富な実績がございます。

相続財産が、「不動産」のみに限らず、「預貯金債権」がある場合にも、対応しております。

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