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- 特別受益の種類と評価
先日のブログで特別受益について記載をしましたが、今日は特別受益の種類と評価についてです。
特別受益は民法903条で規定されています。
- 第903条 (特別受益者の相続分)
- 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
■種類について
この中で、特別受益の定義として①遺贈、②婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与、としています。
①の「遺贈」は、遺言によって特定相続人等に遺言者の財産を渡すことですので、特別受益に該当するかどうかで争いになることは少ないです。
②の「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与」は生前の贈与ですので、こちらは、特別受益に該当するかどうかの争いが発生する可能性があります。
■婚姻若しくは養子縁組のための贈与
「持参金」「支度金」は、一般的に特別受益と考えられます。しかし、被相続人の財産と比べて少額であれば、特別受益に該当しない可能性もあります。
「結納金」「挙式費用」は、一般的に特別受益に該当しない可能性が高くなります。
■生計の資本として贈与
「生計の資本として贈与」の範囲は広く、争いの余地が大きくなります。例えば「居住用不動産の贈与又はその取得のための資金の贈与」「相続人の事業費の贈与」などが考えられます。親からの一般的な範囲での「新築祝い」「入学祝い」等は特別受益に該当しないとされています。
なぜこのような違いが生じるのでしょうか?それは民法877条で規定している扶養義務があるためです。
第877条 (扶養義務者)
- 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
この扶養義務のために、支出した金銭等は特別受益に該当しませんが、その支出した金銭の額が多額になった場合は、特別受益になると考えられます。一概にいくらからが特別受益に該当するかは言えませんが、被相続人の生前の資力、社会的地位、生活状況によって決定されます。
例)特定の子供だけに、約10年間毎月生活費として5万円援助していた。
「生命保険」はどうでしょうか?
「契約者:被相続人」「受取人:相続人の1人」はよくある話ですが、原則として特別受益に該当しません。
しかし、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認できないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がある場合は、特別受益に該当する、という判例があります(最二小決平成16年10月29日)。この事例は、相続開始時の相続財産が約5,958万円、生命保険金が約574万円でしたが、生命保険金は特別受益に該当しないとしました。
■評価について
特別受益に該当すると、相続開始時の遺産総額に生前贈与分を加算します。それでは、この生前贈与された財産の評価はどうなるのでしょう。
判例では、贈与された時点の評価でなく、相続開始時の評価とされています。例えば、昭和20年代に贈与された現金100万円と現在の100万円では価値が大きく異なるため、相続開始時の価額で評価でするとされています。
このように、特別受益の範囲・評価方法をよく知らなければ、よかれと思ってした贈与や援助が、残された相続人の間での争いごとになる場合もあります。生前に贈与される場合は、専門家への相談を含め、よく検討されることをお勧めします。
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