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- 会社法
- 取締役会非設置会社の役員変更
2018.9.14公開 2018.9.7更新
比較的小規模の会社では、取締役会を設置していない会社が多くあります。
そのような取締役会非設置会社であっても役員変更は最低10年に一度は発生します。
取締役会・監査役の設置は義務?
まず、取締役会の設置は義務ではありません。たとえ取締役が3名以上いたとしても、取締役会を設置する必要はありません。
同じく、定款で設置規定がない限り、監査役の設置義務はありません。
取締役の選任について
取締役は、株主総会の普通決議で選任します。(会社法329条第1項)
・定足数要件:議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主の出席
・決議要件:出席した当該株主の議決権の過半数の賛成
※定款で要件を一定の条件まで緩和することができます。(会社法341条)
なお、株主が取締役候補者となった場合でも、当該候補者に株主総会の議決権はあるとされています。
取締役の就任承諾について
会社と取締役の関係は、委任契約となります(会社法330条)。
その為、株主総会で取締役を選任したとしても、当該取締役の就任承諾が必要となります。この承諾は、株主総会の席上でも、別途就任承諾書でも問題ありません。
就任年月日は、株主総会の席上で承諾した場合は株主総会開催日、就任承諾書の場合は就任承諾書作成日となります。
取締役就任登記の必要書類
取締役を新たに選任した場合、選任後2週間以内に登記申請をしなければなりません。
登記の必要書類
- 取締役を選任した株主総会議事録
- 就任承諾書
- 株主リスト
- 印鑑証明書
1)取締役を選任した株主総会議事録の押印
株主総会議事録は会社法上、押印義務を課されておりません。その為、定款に押印規程が無い以上、押印なしでも問題ありません。
しかし、株主総会議事録の真実性の担保を保つため、株主総会に出席した代表取締役が、議長兼代表取締役として株主総会議事録に法人実印を押印することを勧めいたします。
※選任された取締役個人の押印について
「不要」又は「株主総会の席上で就任承諾した場合は、個人実印を押印」
のどちらでもかまいません。
2)就任承諾書の押印
選任された取締役が実印を押印。
※再任時は、認印で可
なお、株主総会議事録に、株主総会の席上で承諾した旨の記載がある場合は就任承諾書は不要となります。
3)株主リストの押印
株主総会開催時の株主構成を記載したリストが必要となります。
押印者は、登記申請時の代表取締役となります。
4)印鑑証明書の有効期間
有効期間は特にありませんので、3ヵ月を超えていても使用できます。
代表取締役の選定について
取締役会非設置会社では、取締役全員に「代表権」があり、取締役全員が対外的業務執行が可能となります。
しかし、適正な業務執行を行うため、取締役が複数いる場合は、取締役の中から代表取締役を定めることができます。
代表取締役の資格
代表取締役は、取締役の中から選任されます。そのため、取締役でない者を代表取締役にするには、まず株主総会で取締役に選任する必要があります。
代表取締役の選定について
取締役の中から一部の者のみ「代表権」を付与する方法は、次の3通りとなります。
1 定款に代表取締役の氏名を記載する方法
株主総会の決議は、特別決議により定款を変更します。
定足数要件:行使できる議決権の過半数を有する株主が出席
決議要件:出席した株主の議決権の2/3以上の賛成
2 株主総会の決議によって選定する方法
株主総会の決議は、普通決議で足ります。
定足数要件:議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主の出席
決議要件:出席した当該株主の議決権の過半数の賛成
3 取締役の互選
定款に「代表取締役は取締役の互選により定める」旨の規定がある場合は、取締役の過半数の一致により代表取締役を選定します。多くの会社に採用されている規定となります。
代表取締役の就任承諾について
上記1、2の場合は、取締役の地位と代表取締役の地位が包括していると考えらる為、「取締役」の就任承諾のみで足ります。別途「代表取締役」の就任承諾は不要となります。
それに対し上記3の場合は、代表権のない取締役から新たに代表権のある代表取締役を選定するため、「取締役」の就任承諾だけでは足りず、別途「代表取締役」の就任承諾が必要となります。
代表取締役就任登記の必要書類(取締役互選規程がある場合)
代表取締役を新たに選任した場合、選任後2週間以内に登記申請をしなければなりません。
登記の必要書類
- 取締役の互選書
- 定款
- 就任承諾書
- 辞任届
- 印鑑証明書
- 印鑑(改印)届書
1)取締役の互選書の押印について
出席した取締役全員(監査役がいる場合は、監査役も含む)の個人実印を押印。
ただし、前代表取締役(法人実印届出人)が、取締役の互選書に届出印(法人実印のこと)を押印しているときは、その他出席した取締役は個人の認印で足ります。なお、前代表取締役が取締役の互選書に押印するには、取締役又は監査役等になっていなければなりません。
※前代表取締役が法人実印を押印出来る場面
現役員構成 取締役 A,B,C 代表取締役 A
でAが代取を辞任して、Bが新代取になる。
変更後役員構成 取締役 A,B,C 代表取締役 B
上記の場合、ABCの互選でBを代表取締役に選定し、当該取締役互選書にABC全員が押印します。このAが、届出印(法人実印のこと)で押印した場合は、BCは認印で押印で足りることになります。ここでのポイントは、Aは代表取締役を辞任したが、取締役としては法人に残留しているため、新任代表取締役の選任決議に参加できたことです。
<参考>
ア)取締役の中から代表取締役を定めずに、全員が代表取締役になった場合
→取締役の選任に係る「株主総会議事録」に議長および出席取締役が個人実印を押印+印鑑証明書+「株主リスト」イ)定款または株主総会決議により取締役の中から代表取締役を定めた場合
→定款の変更に係る「株主総会議事録」、または代表取締役を定めた「株主総会議事録」に議長および出席取締役全員が個人実印を押印+印鑑証明書+「株主リスト」
2)定款について
取締役の互選規程が定款にある旨を証するため、必要となります。
なお、定款はコピーでよく、語尾に「本証は定款の写しに相違ありません。平成 年 月 日 〇〇株式会社 代表取締役B」と記載し、法人実印を押印します。各ページの割印も必要となります。
3)就任承諾書について
新代表取締役の就任承諾書には、個人の認印の押印で足ります。
4)辞任届について
辞任する代表取締役が、法人実印又は個人実印を押印する。個人の認印は認められません。
※任期満了による退任の場合は、当然「辞任届」は不要です。
5)印鑑証明書について
・取締役の互選書に添付する印鑑証明書
原則:出席した取締役全員
例外:前代表取締役が法人実印を取締役互選書に押印した場合は、一切不要(法人の印鑑証明書も不要)
・就任承諾書に添付する新任代取の印鑑証明書
添付不要
・辞任届に添付する代取辞任者の印鑑証明書
辞任届に法人実印を押印した場合は不要。
辞任届に法人実印を押印していない場合は必要となり、辞任届には必ず個人実印を押印となります。
6)印鑑(改印)届書について
法人の代表者が変更となりますので、印鑑(改印)届書が必要となります。
添付書類として、新代表者の個人の印鑑証明書が必要となります。
なお、5)で新任代表取締役が個人の印鑑証明書を提出していた場合は、不要となります。
注)印鑑証明書の有効期間について
5)の印鑑証明書は、有効期間は特にありませんので、3ヵ月を超えていても使用できます。
それに対し、6)についての印鑑証明書は、3ヵ月以内のものとされています。
印鑑(改印)届書ついて
代表取締役が変更される場合は、必ず法務局に印鑑(改印)届書を提出しなければなりません。
なお、代表者変更はあるが法人実印の変更が無い場合であっても、印鑑(改印)届書の提出が必要となります。
当事務所の特徴
役員変更は、簡単のようにみえて以外に複雑な登記申請です。
書類不備のまま登記申請をすると、補正で何度も法務局に足を運ぶことになってしまい、貴重な時間を無駄にしかねません。
当事務所は、比較的規模の小さい事業者様の登記を数多くご依頼を頂いており、役員変更登記等の商業登記については全国対応しております。
役員変更登記のご用命がございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
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