不動産を売買するときは、一般的に下記の図のように、まず仲介の不動産業者と媒介契約をします。次に不動産業者が買主・売主を見つけてきます。そして条件が整えば、買主と売主が不動産の売買契約をします。
仲介の不動産業者はそれぞれのお客様のために、①物件の調査②価格の査定③広告④売買契約の作成⑤重要事項説明など、さまざまな業務をしてます。
そして、仲介の不動産業者に対し、不動産売買価格に応じて一定の仲介手数料が発生します。
<仲介手数料 2014年4月1日施行>
一般的に、3つに区分して計算するのは面倒ですので、不動産売買価格が400万円(税別)を超える場合は、次の簡易計算式が使われます。
仲介手数料(税抜)=売買価格の3%+6万円
例えば、2,000万円の不動産を売買した時は、
買主は2,000万円×3%+6万円=66万円(税抜)
売主も2,000万円×3%+6万円=66万円(税抜)
の合計132万円(税抜)の仲介手数料が必要となります。
取引の目途がたっていない場合は、売主買主を見つけたり、トラブル防止などのメリットがありますので、仲介手数料を支払う意味があります。
しかし、「親族間で売買」、「隣近所の人と売買」などで、既に売主買主が決まっており、トラブルも発生しにくい状況であれば、仲介手数料を支払ってまで不動産業者を通して取引をするメリットはあまりありません。
このような場合に、仲介業者を通さずに売主買主が直接取引することを「個人間売買」といいます。
下記の2点に該当すれば個人間売買に適しているといえます。
不動産は一般的に高額な取引のため、適切な取引の相手方を見つけることは難しく、⑤の「取引の相手方を見つける」は仲介業者に依頼する最大のメリットであるといえます。不動産業者を通したほうが良い場合は、信頼できる不動産業者をご紹介いたします。
不動産の取引価格を決定することは非常に重要なことです。
それではどのようなことに注意して決めればよいのでしょうか?
仲介業者に依頼した場合、取引価格は次のように決定されます。①売主が「売却希望価格」を伝える、②宅建業者が「査定価格」を価格査定マニュアルに基づいて算出、③売主と話し合いをして「売出価格」を決定④買主が「買主希望価格」を提示⑤売主・買主間で「最終価格」を合意。
ポイントは②の「査定価格」ですが、これは価格査定マニュアルや、同種の取引事例等を根拠として不動産業者は売主に意見します。
時価以外の目安として活用されるのが公的価格となります。
公的価格には次の4つがあります。
種 別 | 価格 水準 ※ |
目 的 | 実施時期 |
---|---|---|---|
公示価格 | 100 | 一般の土地取引の取引価格に指標(目安)を与える。 | 毎年1月1日を価格判定の基準日として、毎年3月下旬に官報にて公示。 |
基準値の標準価格 | 100 | 地価公示の補完的役割。 | 毎年7月1日を価格判定の基準日として、毎年9月末日に都道府県の公報にて公表。 |
路線価 | 80 | 相続税や贈与税の課税価格を評価するための基準となる。 | 毎年1月1日を価格判定の基準日として、毎年8月上旬に国税庁より公表。 |
固定資産税の評価額 | 70 | 固定資産税・登録免許税・不動産取得税等の課税標準となる。 | 3年ごとの基準年度に行われる。基準年度の1月1日に価格評価を行う。 |
これらの価格は、「総合土地政策推進要綱(平成3年1月閣議決定)」により、平成4年から運用されています。
個人から個人へ低額譲渡と税務署にみなされた場合、買手には時価と売買価格の差額に対して贈与税がかかります。これは相続税法7条に規定されています。
相続税法7条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第3章に特別の定めがある場合にはその規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。以下略
ここで言う「著しく低い価額の対価」につていは、ふたつの判決例があります。
「著しく低い価額の対価」に当たるとしてなされた原処分は違法であるとした裁決。
相続税法第7条にいう「著しく低い価額の対価」に該当するか否かは、当該財産の譲受けの事情、当該財産の譲受けの対価の額、当該財産の市場価額及び当該財産の相続税評価額などを総合勘案して社会通念に従い判断すべきものと解するのが相当である。(裁決判断より)
この事例は、相続税評価額(路線価)を超える(約103%)価格で取引をした事例です。
「路線価での譲渡を著しく低い価格でない」とした判例
(以下長文ですが、判決の要旨です。)
この事例は、路線価とほぼ同額で取引をした事例です。
上記裁決・判例のように、路線価で売買をした場合は、相続税法7条のいう「著しい低い価格」には該当しにくいとは思われますが、最終的には税務署が個々の具体的事案に基づき判定します。
「瑕疵」とは、法律用語で「目的物が通常有すべき性質や性能を有しないこと」を言います。そしてこの「瑕疵」について売主が責任を負うことを「瑕疵担保責任」と言います。
当初から売主・買主ともに「瑕疵」が分っていれば「瑕疵」を前提に取引をしますのであまり問題とならないのですが、買主が知らない瑕疵(隠れた「瑕疵」)があった場合に問題が発生します。
例)「現状のまま引き渡す」という条項がある中古住宅の売買で、買主が購入した後に雨漏りすることが発覚した場合に、売主に瑕疵担保責任が追及できるのか。
民法上の瑕疵担保責任は、買主が瑕疵の存在を知ってから1年以内に行使しなければなりません(民法570条、566条3項)。この法律は強行規定でないため「瑕疵担保責任を負わない旨の特約」又は「瑕疵担保責任の期間を2か月にする」などの特約は可能です。ただし、売主が知っていながら買主に告知しなかった瑕疵については、売主は責任を負わなければなりません(民法572条)。
なお、買主の売主に対する瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権は、目的物の引渡後10年で時効により消滅します(最判13.11.27)。
宅建業者が売主となり、宅建業者でないものが買主になる時は、民法上1年とされている瑕疵担保責任期間を、目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、買主に不利となる特約をしてはならないと規定されています(宅建業法40条)。
例)不動産業者が売主となって中古住宅を販売するような場合に、「建物に対する瑕疵担保責任の免除」特約を付けて売買契約を交わしたとしても、無効となります。
媒介業者は、売買の当事者でないので原則瑕疵担保責任を負いません。
しかし宅建業法35条では以下の規定をしています。
宅建業者が不動産売買の媒介・代理を行う場合の売買当事者等に対して、取引主任者によって、法所定の重要事項を説明しなければならない。(業法35条要約)
この規定は、不動産取引のプロである取引主任者が、売買当事者に対して取引物件・取引条件などの重要事項を説明することにより、契約締結後の紛争を防止するためのものです。
特に買主にとっては、取引物件に関し正確な情報を持ち合わせていないため、重要事項説明の役割は大きいと言えます。
上記が主な重要事項説明の項目です。
もしこれらの項目の中で故意に事実を告げない、不実のことを告げる等の行為があれば、媒介業者の調査・説明責任の問題となり、宅建業法違反の可能性もあります。
■主な宅建業者の責任
指示処分(業法65条1項・3項)、又は1年以内の業務の全部又は一部停止の処分(65条2項2号・4項2号)がなされ、さらに情状が特に重いときは免許の取消処分(66条1項9号)
ただ、不動産業者が隠れたる瑕疵を全て把握することは困難です。そこで売主等から「告知書」(所有者にしか分らない不動産の情報が記載されたもの)を提出してもらい、瑕疵について確認する事もあります。