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農地の時効取得(登記手続き)

2017年10月3日

2021.1.20更新

農地を移転する為には、原則農地法3条又は5条の許可が必要となります。しかし、「時効取得」を原因とする所有権移転の場合は、農地法の許可不要となります。

ただし、農地法の許可書を添付しないで登記申請をした場合、農業委員会にその旨を通知することになっております。

農地の時効取得専用のページ

時効取得の要件

時効取得については、民法162条に規定されています。

(所有権の取得時効)
第162条
1.二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2.十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

時効の要件としては、

  1. 所有の意思のある占有
  2. 平穏かつ公然に占有
  3. 「他人の物」を占有
  4. 一定期間(20年間又は10年間)の占有の継続
  5. 占有開始時における善意無過失(10年時効取得の場合のみ)

となります。

自主占有か他主占有か

上記1のように、時効取得をするには、「所有の意思のある占有」が必要となります。例えば、賃借をする意思で10年間アパートの部屋を占有しても、時効取得はできません。

では農地を、農地法の許可なしに他人から購入し、占有した場合、買主に「所有の意思のある占有」が認めれらるのでしょうか?
この点につき最判52.3.3民集31.2.157では、

農地の賃借人が所有者から上記農地を買い受け,その代金を支払ったときは,農地調整法(現農地法)4条所定の都道府県知事の許可又は市町村農地委員会(現農業委員会)の承認を得るための手続がとられなかったとしても,買主は,特段の事情のない限り,売買契約が締結されその代金が支払われた時に,民法185条にいう新たな権原により所有の意思をもって上記農地の占有を始めたものというべきである。

として、農地法の所定の許可がなくても売買代金を支払えば「所有の意思のある占有」で始めたものと認めています。

善意無過失か悪意か

占有開始時に、自己所有として信じて(善意・無過失)占有をした場合の時効取得の占有期間は10年、他人の物と知りながら(悪意)占有した場合の時効取得の占有期間は20年となります。

では、農地法許可を得ないで取得した農地の占有は、どちらに判断されるのでしょうか?この点につき、行政の通達(昭和52年8月25日52構改B第1673号)によれば、

取得時効完成の要件を備えているか否かの判断に当たっては、農地に係る権利の取得が、農地法所定の許可を要するものであるにもかかわらず、その許可を得ていない場合には、占有(準占有)の始めに無過失であったとはいえず、このような場合の農地に係る権利の時効取得には、20 年間所有の(自己のためにする)意思を以って平穏かつ公然と他人の農地を占有(農地に係る財産権を行使)することを要するものと解される

として、20年間の占有が必要としています。

「時効取得」を原因とする登記申請

農地の「時効取得」を原因とする所有権移転登記には、農地法の許可書の添付は不要です。

しかしこの登記制度を悪用して、買主売主双方の申請により登記原因を「時効所得」という名目でその許可を得ることなく農地について所有権移転の登記が行われている事例が散見されるようになりました。

このような農地法違反行為は、農地法の適正な運用を図る上で、看過することができないとして、登記手続きにおいて次の手続が取られようになりました。(昭和52年8月25日52構改B第1673号)
農地の時効取得

法務局の対応

登記官は、農地につき農地法の許可がない「時効取得」を原因とする登記申請がされ場合、農業委員会にその旨を通知します。

農業委員会の対応

登記官から通知を受けた農業委員会は、時効取得が認めれるか実情を調査する。
要件を具備していないと判断した場合、
・登記完了前
登記官にその旨を通知。当該登記申請人に通知及び当該申請を取り下げさせる。
・登記完了後
当該登記申請者に対して農地法違反であることを連絡。速やかに当該登記の抹消および農地の返還等の是正をおこなうよう指導。都道府県へ実情を報告。
是正が行わなければ、都道府県知事に対して、是正を行うべき旨の通知を行うよう連絡。

都道府県の対応

農業委員会から、是正を行うべき旨の通知を行うよう連絡があった場合、必要に応じて実情を調査を行う。通知が必要と判断した場合、登記申請当事者に対して、農業委員会経由で是正すべき旨を通知。
その後、通知内容の履行が遅滞していることにつき、相当な理由が認められる場合を除き告発を行う。

結論

農地の時効取得には、農業委員会の許可は不要です。

しかし、農業委員会に時効取得に認められない限り、時効取得を原因とする所有権移転登記申請は取下げになることになります。

時効取得の要件を満たしている場合のみ、時効取得を登記原因とした所有権移転登記を申請すべきです。

時効取得と農地転用許可

無事に、農地を時効取得したとしても、時効取得後に当該農地を農業以外の目的で利用しようとする場合は、別途農地法上の転用許可が必要となります。時効取得者の意思のみで、登記地目を農地から宅地等に変更することや、現況を農地から宅地等に変更することはできません。

逆に、現況が農地でないの土地を、時効取得によって取得したとしても、農地法上の転用許可をとらなければ、時効取得者に対して、現状回復命令が発せられる可能性があります。

※市街化区域内の農地は、原則「許可」でなく、「届出」で足ります。

当事務所の特徴

当事務所は、農地の時効取得・地目変更に関して豊富な経験と実績があります。お気軽にお問い合わせ下さい。

当事務所の取り扱い事例

昭和29年5月14日 農地を売主甲(登記名義人)、買主Aで売買(売買契約締結、売買代金支払済、農地法許可無、移転登記未了)

昭和60年 甲死亡、相続人乙及び丙

平成25年 買主A死亡、相続人B及びC

所有権名義を、甲からBに「時効取得」を原因とする所有権移転登記。

農地 時効取得

※事例は、事実を簡略化しております。

農地の時効取得専用のページ

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 簡裁訴訟代理関係業務認定
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 第524020号

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