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- 有限会社の社長(代表取締役)の交代
有限会社は、平成18年5月1日に施行された会社法により、現在は新設できなくなった会社の形態です。しかし、既存の有限会社は、その商号の中に有限会社を用いたまま、会社法及びその整備法の規程による株式会社として存続することになりました。
既存の有限会社は、会社法の施行とともに「特例有限会社」と呼ばれる会社類型となります。
特例有限会社の代表機関は?
特例有限会社の代表機関は、次の5通りとなります。
①取締役を1名しか置いていない
当該取締役が、特例有限会社を代表する。
②取締役を2名以上置いている
取締役全員が、特例有限会社を代表する。
③2名以上の取締役の中から、定款をもって、代表取締役を定めた場合
代表取締役だけが、特例有限会社を代表する。
④2名以上の取締役の中から、定款の定めに基づく取締役の互選をよって、代表取締役を定めた場合
代表取締役だけが、特例有限会社を代表する。
⑤2名以上の取締役の中から、株主総会の決議によって、代表取締役を定めた場合
代表取締役だけが、特例有限会社を代表する。
代表取締役の選任
上記の①②であれば、代表取締役を選任する必要はありません。
上記③④⑤の場合のみ、代表取締役を選任する必要があります。
定款による選任
株主総会の決議による、定款変更により代表取締役を選任します。
※決議要件(特別決議)出席株主の議決権の3分の2以上
取締役の互選による選任
定款に「当会社は、代表取締役を1名置き、取締役の互選によって定めるものとする」の趣旨の規程がある場合に、取締役互選によって代表取締役を選任します。
株式会社の取締役会で代表取締役を選任するイメージです。
株主総会の決議による選任
定款に「当会社は、代表取締役を1名置き、株主総会の決議によって定めるものとする」の趣旨の規程がある場合に、株主総会によって代表取締役を選任します。
※決議要件(普通決議)議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数
代表取締役就任の承諾
上記①②の場合は、代表取締役の概念がないため、代表取締役のみの就任承諾はありえません。取締役の就任承諾は必要。
上記③⑤の場合は、取締役の地位と代表取締役の地位が一体化しているため、上記と同じく代表取締役のみの就任承諾はありません。取締役の就任承諾は必要。
上記④の場合は、、取締役の地位と代表取締役の地位が一体化していないため、代表取締役の就任承諾が必要。前提として、取締役でなければならないため、取締役選任時の、取締役の就任承諾も必要。
代表取締役の退任
特例有限会社の代表取締役は下記の事由により退任します。
死亡
代表取締役の死亡です。なお、取締役の地位も当然に退任します。
取締役の地位の喪失
代表取締役の前提となる取締役地位を、辞任、任期満了等により終了したときは、当然に代表取締役の地位も退任となります。
代表取締役の地位のみ辞任
上記③⑤の場合は、取締役の地位と代表取締役の地位が一体化しているため、代表取締役の地位のみ辞任はできないとされています。
上記④の場合は、取締役の地位と代表取締役の地位が一体化していないため、代表取締役の地位のみ辞任も可能です。
代表取締役の地位のみ解任
上記③⑤の場合は、定款変更又は株主総会により取締役と代表取締役を一体で解任しなければなりません。
※定款変更(特別決議)出席株主の議決権の3分の2以上
※解任(普通決議)議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数
上記④の場合は、取締役の地位と代表取締役の地位が一体化していないため、代表取締役のみの解任も可能です。
なお、代表取締役の解任を目的とする取締役の決議においては、当該代表取締役は決議権がないとされています(民甲第1940号民事局長回答)
代表取締役の辞任・就任登記の登記必要書類
事例1)代表取締役の交代
- 現役員構成 取締役 A,B,C 代表取締役 A
- 変更後役員構成 取締役 A,B,C 代表取締役 B
- 定款に「取締役が2名以上いる場合は、取締役の互選により、代表取締役を選定する」旨の規定があり。
登記必要書類)
- 取締役の互選書+議事録署名者の印鑑証明書
- 就任を承諾したことを証する書面+印鑑証明書
- 辞任届+印鑑証明書
- 定款
- 委任状
- 印鑑(改印)届書
必要書類1)について
原則:取締役の互選書には、出席した取締役の記名+実印による押印と印鑑証明書が必要。
例外:取締役の互選書に、代表取締役として法務局に印鑑を届けている者がいて、その者が登記者の届出印(法人実印のこと)を当該議事録に押印しているときは、出席した取締役の実印による押印及び印鑑証明書が不要。
具体的には、つぎのようになります。
ABC間の互選で、Bを代表取締役に選定。当該取締役互選書にAが届出印(法人実印のこと)を当該議事録に押印した場合は、BCは認印で押印し、BCの印鑑証明書も不要。
<参考>
ア)取締役の中から代表取締役を定めずに、全員が代表取締役になった場合
→取締役の選任に係る「株主総会議事録」に議長および出席取締役が個人実印を押印+印鑑証明書+「株主リスト」イ)定款または株主総会決議により取締役の中から代表取締役を定めた場合
→定款の変更に係る「株主総会議事録」、または代表取締役を定めた「株主総会議事録」に議長および出席取締役全員が個人実印を押印+印鑑証明書+「株主リスト」
必要書類2)について
原則:就任承諾書に、新代表取締役の実印の押印+印鑑証明書が必要。(本事例はこちら)
例外:再任(=重任)の場合は、新代表取締役は認印の押印のみで足ります。
必要書類3)について
代表取締役の選任が取締役の互選であること証するため必要。
なお、この場合の定款は、全文でなければなりません。(「登記研究」449号)
必要書類4)について
原則:代表取締役の辞任届に、辞任した代表取締役の個人の実印の押印+印鑑証明書が必要。
例外:代表取締役の辞任届に、辞任した代表取締役の法人届出印(法人実印のこと)の押印。
※任期満了による退任の場合は、当然「辞任届」は不要です。
必要書類5)について
司法書士に登記を依頼する場合等は、委任状に届出印(法人実印のこと)の押印が必要となります。
必要書類6)について
法人の代表者が変更となりますので、印鑑(改印)届書が必要となります。
添付書類は、新代表者の個人の印鑑証明書となります。
なお、1)又は2)で新代表者の個人の印鑑証明書を提出した場合は、不要です。
注)印鑑証明書の有効期間について
1)から3)までの印鑑証明書は、有効期間は特にありませんので、3ヵ月を超えていても使用できます。
それに対し、5)についての印鑑証明書は、3ヵ月以内のものとされています。
登記すべき事項
「役員に関する事項」 「資格」代表取締役 「氏名」A 「原因年月日」平成30年9月6日辞任 「役員に関する事項」 「資格」代表取締役 「氏名」B 「原因年月日」平成30年9月6日就任 |
事例2)取締役が1名になった①
- 現役員構成 取締役 A,B 代表取締役 A
- 変更後役員構成 取締役 B
※Aが取締役と代表取締役双方を辞任したため、役員が取締役Bのみとなった。取締役Bは当然に代表権を持つが、代表取締役という肩書きはつけれない。
登記必要書類)
- 辞任届+印鑑証明書
- 委任状
- 印鑑(改印)届書
必要書類1)について
原則:代表取締役及び取締役の辞任届に、辞任した代表取締役の個人の実印の押印+印鑑証明書が必要。
例外:代表取締役及び取締役の辞任届に、辞任した代表取締役の法人届出印(法人実印のこと)の押印。
※任期満了による退任の場合は、当然「辞任届」は不要です。
必要書類2)について
司法書士に登記を依頼する場合等は、委任状に届出印(法人実印のこと)の押印が必要となります。
必要書類3)について
法人の代表者が変更となりますので、印鑑(改印)届書が必要となります。
添付書類は、新代表者の個人の印鑑証明書となります。
なお、1)又は2)で新代表者の個人の印鑑証明書を提出した場合は、不要です。
注)印鑑証明書の有効期間について
1)の印鑑証明書は、有効期間は特にありませんので、3ヵ月を超えていても使用できます。
それに対し、3)についての印鑑証明書は、3ヵ月以内のものとされています。
登記すべき事項
「役員に関する事項」 「資格」取締役 「住所」広島市〇〇区〇〇町 「氏名」A 「原因年月日」平成30年9月6日辞任 「役員に関する事項」 「資格」代表取締役 「氏名」A 「原因年月日」平成30年9月6日辞任 |
事例2)取締役が1名になった②
- 現役員構成 取締役 A,B 代表取締役 A
- 変更後役員構成 取締役 A
※Bが取締役を辞任したため、役員が取締役兼代表取締役Aのみとなった。取締役Aは当然に代表権を持つが、代表取締役が抹消される。
登記必要書類)
- 辞任届
- 委任状
必要書類1)について
取締役の辞任届に、辞任した取締役の認印の押印で可。
※任期満了による退任の場合は、当然「辞任届」は不要です。
必要書類2)について
司法書士に登記を依頼する場合等は、委任状に届出印(法人実印のこと)の押印が必要となります。
登記すべき事項
「役員に関する事項」 「資格」取締役 「住所」広島市〇〇区〇〇町 「氏名」B 「原因年月日」平成30年9月6日辞任 「役員に関する事項」 「資格」代表取締役 「氏名」A 「原因年月日」平成30年9月6日取締役が1名となったため氏名抹消 |
当事務所の特徴
役員変更は、簡単のようにみえて以外に複雑な登記申請です。
書類不備のまま登記申請をすると、補正で何度も法務局に足を運ぶことになってしまい、貴重な時間を無駄にしかねません。
当事務所は、比較的規模の小さい事業者様の登記を数多くご依頼を頂いており、役員変更登記等の商業登記については全国対応しております。
役員変更登記のご用命がございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
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